腹黒王太子の華麗なる策略
ディオンの朝食を私達が失敬したことは、ふたりだけの秘密だ。

それから、みんなモコの背に乗って城に帰ると、男女別れて汗を流し、クリスの部屋で今日の勝利を祝った。

宴が終わり、みんな退散して、部屋には私とクリスのふたりだけ。

寝所を整えていたら、「アン」と彼が呼んで手招きする。

なんだろう?

そう思いながらクリスの元に行けば、先程まで料理が並んでいたテーブルに、小さな宝石が散りばめられた手の平程の大きさの宝箱があった。

「すごく綺麗だね」

宝箱を見て言うと、クリスは「これは母の形見なんだ」と言って微笑んだ。

彼は宝箱を開け、中に入っていた宝石を取り出す。

それは七色の光を放つ指輪だった。

見たこともない不思議な石に目を奪われていると、突然クリスが跪き、私の左手を取った。

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