腹黒王太子の華麗なる策略
アンは俺が悪魔と契約したことも、このあざのことも知らない。

俺の爪が黒いのは知っているが、それは病気のせいだと彼女は思っている。

着替えや湯浴みの時にアンをからかうのも、俺のこのあざを見られないようにするため。

今朝のようにからかえば、彼女が俺の裸を見ることは絶対にない。

「言われなくてもわかっている。まだ死ぬわけにはいかないからな」

ラルフを安心させるために、フッと笑ってみせる。

すると、再びドアをノックする音が聞こえて、侍従長のダクトスが若い侍従をふたり連れて部屋に入ってきた。

「朝食をお持ちしました」

「ああ、ご苦労」

侍従長にそう声をかけると、丸テーブルにパンやスープ、肉料理が並べられた。

ダクトス以外の侍従達が部屋を出ると、アンが飼っている白猫のモコが入れ違いに入ってきて、ちょこんとテーブルに飛び乗る。
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