腹黒王太子の華麗なる策略
ディオンを真っ直ぐ見据えて指示を出すと、こいつは真剣な面持ちで返事をした。

「わかった」

「モコ、お前もアンの側を離れるなよ。何が起きるかわからないから」

モコの頭を優しく撫でながらそう言えば、モコはニャーと鳴く。

俺の言うことがわかっていて返事をしているのだ。

賢い猫だと思う。

それから食事をしていると、ディオンは突然「コホン」と咳払いした。

「どうした?肉が喉につまったか?」

ディオンを見ておかしそうに笑えば、こいつは躊躇いがちに口を開いた。

「……なあ、昨日の晩、アンとずっと一緒だったんだって?」

「アンが言ったのか?」

俺がディオンに聞き返せば、こいつは言葉を濁した。

「……まあ。で、アンの首筋の鬱血痕はどういうつもりでつけたんだ?」
< 34 / 307 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop