腹黒王太子の華麗なる策略
「ああ、あれか?好きな女と同衾して何もしないわけないだろ」

開き直ってそう返せば、俺の答えが不満だったのか、ディオンはテーブルに身を乗り出して問い質した。

「兄上はアンをどうするつもりなんだ?王族と侍女は結婚できないだろ?愛人にでもするのか?」

そう、古い慣習で王族は王族としか結婚できない。

だが、父のように国を守るため、慣習に背く者もいる。
「父上は魔女と結婚したぞ」

そう指摘すると、ディオンは「うっ」っと言葉に詰まった。

「下らない法なんて変えてしまえばいい。だが、今アンと結婚はできない。俺は悪魔と契約しているからな」

自分の黒い爪をじっと見つめ、自嘲めいた口調で言う。

俺が悪魔と契約したことを知っているのは、ラルフとディオンだけ。
< 35 / 307 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop