腹黒王太子の華麗なる策略
溜め息交じりの声でそう言うと、ディオンは苛立っているのか、肉をナイフで切らずにそのまま口の中に放り込んだ。

「心配は無用だ。俺がアンを逃がさない」

余裕顔の俺に、ディオンは肉を噛みながら投げやりな態度で言い放った。

「ああ〜、もうふたりで勝手にやってくれ」

「アンには何も言うなよ。悪魔との契約のことも。言ったら、お前の舌抜くからな」

ニヤリと微笑んでディオンに警告すれば、可愛い弟はじっとりと俺を見ていつものようにぼやいた。

「……だから、兄上が言うと冗談に聞こえねえって」
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