腹黒王太子の華麗なる策略
いけない。

普段通りにしなきゃダメだ。

でないと、私が乳兄妹としてじゃなく、ひとりの男性としてクリスを好きだって、このままだと彼に知られてしまう。

でも……どうしたらいいの?

いつもどう彼に接していたかもわからない。

頭の中は滅茶苦茶。

今まで私……どんな顔をしてクリスを見てた?

どんな風に彼とおしゃべりした?

焦りすぎて……何も頭に浮かばない。

そんなことを考えていると、ポチャンと水音がして、クリスに声をかけられた。

「アン、もういいよ」

恐る恐る目を開け、私の足元に脱ぎ捨てられたクリスの衣をしゃがんで手に取る。

いつも通りそこでそそくさと踵を返してこの場を離れれば良かったのに、今日の私はボーッとしていてすぐには動けなかった。

正面に何気なく目をやれば、湯けむりの中、彼の全裸の後ろ姿のシルエットが目に飛び込んできた。

「ギャッ!」

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