腹黒王太子の華麗なる策略
「そ、それも、小さい頃の話だよ!」

「……そうだね。お互い大人になった。自分は理性的だと思っていたけど、やはり君を前にするとただのオスだったんだって実感するよ」

自虐的な響きを宿した声にハッとしてクリスを見上げる。

「……クリス?」

クリスは、今まで見たこともないような熱い目で私を見ていた。

数秒の沈黙。

それがすごく長く感じて怖かった。

「このまま奪ってしまいたい……」

クリスは、悩ましげな声で呟く。

彼のサファイアの瞳が暗く翳って見えるは、気のせいだろうか?

「アン」

切なさと、苦しさと、そして、愛おしさがごちゃ混ぜになったような表情でクリスは私の名前を口にした。

彼の瞳に捕らえられ、私は動けない。

静かな月明かりの中、クリスは私を強く抱き締め唇を奪った。
< 43 / 307 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop