腹黒王太子の華麗なる策略
今朝の羽根のようなキスとは違う。

クリスの唇は緩急をつけて私を翻弄し、私に考える時間を与えない。

私の胸をクリスの手が揉みしだき、初めて知る甘い痺れに身体の力が抜けていく。

息が苦しくなって、私が「ううん……」とくぐもった声を上げると、突然クリスはキスを止めた。

「……アンにとって一番危険なのは、俺かもしれないな」

自嘲するように呟いて、クリスはフッと笑う。

それは、私の知らない彼だった。

「け、結婚するのに、どうして私にこんなキスするの!」

肩を上下させながらクリスを責めれば、彼はどこか謎めいた微笑を浮かべた。

「どうしてだと思う?アンが考えてごらん。これは、なぞなぞだよ。答えがわかったら教えて」

子供の頃は、何でも知っているクリスが私によくなぞなぞを出した。

それは、私達の遊びのひとつで、彼の出す問題にワクワクしたものだ。
< 44 / 307 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop