腹黒王太子の華麗なる策略
だが、俺はアンの頰に手を添え、じっと目を閉じ奴の命令を跳ね除けた。

そう、ルシファーは気まぐれに俺の頭の中で囁いて俺を破滅の道に導こうとするのだ。

時には〝俺の力を使えばたやすく世界を征服できるぞ〟とか〝魔力でこの世を支配しろ〟とか……。

俺が従わないでいられるのは、アンの存在があるからだ。

彼女がいるから、俺の心は悪魔に支配されないでいられる。

「いつか……全てが片付いたらお前に告白するから、待っていて欲しい」

自分勝手な頼みだって思う。

アンを想っている男はたくさんいる。

そいつらを彼女から遠ざけ、自分の側に置いている俺はワガママな男だ。

他の男になんかアンは譲れない。

心から欲しいと思うのは、権力でも王座でもない。

アンだけ。
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