腹黒王太子の華麗なる策略
ラルフ宰相の追及に動揺しながらも、彼が納得するような言い訳を考えて口にする。

「そう言えば、あなたは本を読むんでしたっけ。読み書きだけでなく、ダンスも上手だとクリス様が以前言ってました」

……ダンス。

ここ何年も踊っていないし、かなり昔の話のような気がする。

「小さい頃によく練習の相手をさせられたんです。周りにいた大人は反対したんですけど、クリスが私と練習する方が上達が早いからって笑顔で大人を説得したんですよね」

読み書きもそうだった。

クリスは私と一緒にやると上達するからって理由をつけてたけど、ディオンだっていたし、読み書きについては私は必要なかったはず……。

それに、侍女がダンスを踊れても、一緒に踊る人はいない。

小さい頃はただクリスと踊るのが楽しくて習っていたけど、今の生活には何の役にも立たないなって思う。
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