腹黒王太子の華麗なる策略
それは、ここ数日の間に用意していたものだ。

中身は干し肉とパンと果物と金貨十枚に着替え。

棚の上に置いてあるランプに火をつけ、フード付きのマントを見に纏う。

「モコ、行こう」

ベッドの上で寝そべっていたモコに声をかけると、モコは私の肩に飛び乗った。

ランプと袋を持って部屋を出る。

宴で城中がお騒ぎしているせいか、すんなり城を出れた。

顔見知りの門番にいつものように挨拶して、城門を出ると、背後にある城を振り返る。

クリスと楽しく城で過ごしてきた日々が脳裏に浮かんできた。

目頭が熱くなる。

駄目よ。感傷に浸るな。

自分を叱咤して、溢れそうな涙を堪える。

「今までありがとう。さようなら」

そう呟いて、モコと共に城を去った。

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