ミンジュンが私を溺愛すぎる件
詠美は、心ここにあらずの美沙おばちゃんの代わりに店番をした。
「詠美ちゃん、久しぶりだね~~
何で最近、お店に出てないの?
おじちゃん、寂しくていつも泣いてるんだよ」
常連の客が久しぶりに詠美を見て、皆口を揃えて同じ事を言う。
ミンジュンは工房の中から、笑顔で接する詠美をずっと見ていた。
これが詠美の日常で、この老舗の煎餅屋には必要な存在…
ミンジュンは詠美のお父さんが手際よく焼いていく煎餅を、飽きずに見ながら考えた。
この何十年も続く煎餅の味と暖簾を守り続けているこの家族から、俺は詠美を奪う事ができるのだろうか…
俺は、愛するということの愚かさを知った。
愛は人間を弱くする…
人はそれを優しさというのかもしれないが、俺にとっては弱さ以外の何ものでもない。
詠美をこの家族から奪う事ができないのなら、俺はきっとただの弱虫だ…