ミンジュンが私を溺愛すぎる件



俺は韓国人で韓国に帰る事は当たり前で、詠美と出会ったからといって日本に留まる事なんてできない。
実は、昨日までは、韓国が大好きな詠美を無理やりにでも韓国へ連れて行こうと思っていた。
詠美が望むなら結婚という形をとっても俺は構わないし、いや、俺の本音は、結婚したいと切実にそう願っている。

でも、現実はそう上手くはいなかいし簡単なものではない。
詠美を大切に思えば思う程、俺の中でまだ不慣れな思いやりという気持ちが詠美の幸せを考えろと、耳元で囁いてくる。

ミンジュンは行き場のない思いを封じ込め、詠美を自分の胸に引き寄せた。


「煎餅屋はお父さんの後は誰が継ぐの…?」


ミンジュンは今日一日ずっと気になっていた事を、詠美に質問してみた。


詠美はミンジュンの胸に体を預けて小さくため息をつく。


「私には兄がいるんだけど、どうやら未だに継ぐ気持ちにならないみたいで。
兄は兄でやりたい事があって子供の頃から勉強を頑張っていい大学に入って、今は一流商社でバリバリに働いてる…

多分、きっと、お店は継がないだろうなって、私は思ってる…

兄に今の生活を捨てろなんて可哀想で言えないし、きっとお父さんも美沙おばちゃんも同じように思ってると思うんだ…」


ミンジュンは黙って聞いている。



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