ミンジュンが私を溺愛すぎる件
「でも、お父さんの代でお店を畳むわけにはいかないし、別に4代目は女でもいいと私は思ってる。
煎餅を焼く作業はすごく繊細で難しくて、小さい頃からずっと見て育ったけど、そんな簡単にできるものじゃないっていうのも分かってる。
だから、本当は、時期的にお兄ちゃんと私とお父さんと美沙おばちゃんで、先の事をちゃんと話さなきゃいけないの。
それで、もしお兄ちゃんが継がないってなったら、私はその日から父さんに修行に入る。
たくさんの老舗が寂しい思いをして看板をおろすのを見てきたから、なおさら、一生懸命頑張ってきたお父さんにそんな思いはさせたくないんだ…」
ミンジュンは歯を食いしばり詠美をきつく抱きしめた。
「詠美は男前なんだな…」
詠美はミンジュンを見上げ、三日月の目をして笑った。
「ミンジュンさんには敵わない…
私はミンジュンさんの生き方は好きだよ。
ここまで成功するなんて、すごいなと思うし、尊敬するし、カッコいいと思う」
詠美は体を起こし、ミンジュンの目の前に座った。
「ミンジュンさん…? どうしたの…?」
詠美はミンジュンの目から涙が一粒落ちるのを見た。
「…どうして、泣いてるの?」
ミンジュンは詠美の頬に手を当てる。
「…幸せだなって思ってさ。
詠美の愛を感じてる今が、俺は何よりも愛おしい。
詠美が俺の側にいて、俺に笑いかけてくれてる今が…
でも、今のこのひと時は永遠には続かない。
そう思ったら泣けてきた…」