ミンジュンが私を溺愛すぎる件



「でも、詠美を、詠美の家族から奪う事はできないんだ…

詠美の実家は80年以上も続く老舗の煎餅屋だ。
家族で必死に暖簾を守って頑張っている。

詠美はあの家族の中で、いや、常連の客達の間でも、太陽みたいな存在なんだ。
詠美が居なくなったらあの家は、陽の光が差さなくなってあっという間に廃業だよ。

俺は韓国人で俺のホームグランドは韓国で、だから韓国で一緒に暮らしたいって思うけど、それは無理なんだ」


ジノは弱気なミンジュンを見るのは多分初めてだ。
だから、ちょっとだけ笑ってしまいそうになる。


「でも、一つだけ詠美を手に入れる方法がある…」


ジノはそう言ったミンジュンの鋭い目つきを見た時、さっきの弱気なミンジュンは幻だったのかと思う程だった。


「どういう方法だよ?」


ジノがそう聞くと、ミンジュンはジノを直視して瞬きもせずにこう答えた。


「詠美を手に入れる方法は、俺が、何もかもを捨てて、日本で暮らす事だ」


「は?」


ジノはもう笑うしかない。


「お前が煎餅を焼くのか?」


「詠美が望めば、喜んでそうするよ…」


ジノはミンジュンに関してはいつも寛容でありたいと思っていた。
性格はひねくれているけれどそれは弱くて優しい部分を隠すためだと、ジノなりに理解していたから。
でも、今回はそういうわけにはいかないだろ…?


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