ミンジュンが私を溺愛すぎる件
「ミンジュンさん、すごい!
あ~、でも良かった…
お父さんからもらったお餅を全部台無しにするとこだったから」
詠美は焼き上がった餅をまずは持参した醤油に浸した。
そして、パリッとした焼きのりに巻いてミンジュンに渡す。
「この醤油は先祖代々伝わる、我が家の煎餅屋だけの秘伝の醤油なの。
ちょっと甘めですごく美味しいから。
それと、この焼きのりも、煎餅に使うものと一緒のものなんだ」
ミンジュンは詠美の説明を聞きながら、その餅を食べてみた。
「うん、すごく美味しい…
この間、詠美の家で食べた煎餅と同じ味がする」
詠美は顔をほころばせて自分もその餅を頬張った。
「変な話なんだけど、この味はきっと私とお兄ちゃんにとってはおふくろの味なんだ。
お母さんはいないけど、何て言うか、我が家の味みたいな…
良かった…
ミンジュンさんも気に入ってくれて…
でも、こんなに焦がしたってお父さん達には黙っててね。
もったいないって、絶対怒るから…」
ミンジュンは笑いながら頷いた。
部屋中に漂っているこの甘辛い醤油の味と匂いを、俺は一生に忘れないだろう。
こんなに幸せに満たされた時間を共有した全ての物を、俺はきっと死ぬまで忘れない。