ミンジュンが私を溺愛すぎる件
ミンジュンが部屋に入ると、とても静かな空気が流れていた。
人がいるような気配がない。
…もしかして、詠美、帰ったのか?
ミンジュンはそう考えただけで、とてつもない喪失感と寂しさに打ちのめされた。
最初に詠美の部屋のドアを開ける。
でも、詠美が入った形跡さえ見当たらない。
ミンジュンは部屋の中心に位置するダイニングルームに入ると、すぐに詠美を見つけた。
暦では九月も後半になるけれど、体感気温はまだ夏に近い。
自動で空調は効いているが、壁面が日当たりのいいガラスで囲まれているこのダイニングルームは、薄いレースのカーテンだけでは夕方の西日を防ぎきれない。
ミンジュンはさりげなく詠美に当たる方の窓のカーテンを閉めた。
大きめの黒いソファはまるで詠美を包み込むように、詠美の眠りを守っている。
詠美が胸に抱きかかえているグレー色のソファは、何だか詠美にいい夢でも見せているように詠美の癒しになっている。
ミンジュンはいつの間にか、詠美の寝ているソファの真横に座り込んでいた。
手を伸ばせば、詠美の頬を触れる事ができる。
でも、ミンジュンはそうせずに、ただ詠美の寝顔を見た。
ジノが言うように、自分のしている事は突拍子のない事くらい分かっている。
今まで女はおろか男にだって中々自分をさらけ出す事を拒んでいた俺が、初めて会った女の子を自分のプライベート空間に入れているのだから…