ミンジュンが私を溺愛すぎる件
詠美は秋も深まりかけたこの季節に東京巡りができるなんて、本当は心がウキウキしていた。
東京で生まれ育った者にてとってデートとかではない限り、中々東京観光なんてすることはない。
一着だけ持ってきていた私服に着替え、ミンジュンの支度が済むのを待った。
「行くぞ」
ミンジュンはそう言うと、詠美の手を取り部屋を出る。
ミンジュンは20代の若者のような恰好をしていた。
ジーンズに濃い目のグレーのパーカー、そして黒のキャップをかぶっている。
その姿にサングラスをかけると、それがミンジュンだときっと誰も気付かない。
エレベーターを降りると、いつもの正面玄関のロータリーとは違う場所に向かった。
そこは、VIP専用の車寄せの場所だ。
もうすでにテヒョンが車を横付けしていて、ドアを開けて笑顔で二人を待っている。
詠美はテヒョンにどう接すればいいかずっと考えていたが、テヒョンの笑顔を見たらもちろん邪険に扱う気にはなれない。
普通に接しようと心に決めた。
ミンジュンさんだってもういい大人だし、その心理は分かってくれるはず…
ミンジュンは車に乗り込み助手席に座ると、自分でカーナビに行く場所を登録した。
詠美がそのカーナビを覗き見ると、どうやら今日はお寺や神社を巡るらしい。
今のところその名前の中に浅草がない事にホッとした。