ミンジュンが私を溺愛すぎる件
詠美はとりあえず黙った。
ミンジュンさんの気持ちが和んだ時を見計らって、その時にテヒョンの解雇を撤回してもらうようお願いしよう。
ミンジュンは詠美の手をずっと握ったままどんどん前へ進んで行く。
いつの間にか人混みもなくなり、けやき通りが見えてきた。
この通りは都会のど真ん中にありながら、けやき並木や花壇による四季折々の景観が楽しめる散歩道として有名な場所だった。
「俺は、東京が好きだ。
ちょっと足を伸ばすと、こんな風に綺麗な風景が色々な場所で見れるから」
ミンジュンは、その通りから奥まった場所にある公園のベンチに詠美を座らせた。
自分自身はその公園から見えるけやき通りを写真に収める。
天気がいいせいで、緑の葉っぱや茶色の幹が普段より色が濃く感じる。
何枚か連写した後、詠美の元へ戻って腰を下ろした。
「俺が初めて東京へ来た時は冬で、ここの通りは青白いイルミネーションで装飾されてて、天国へ続く道かもしれないって思えるほどに、すごく綺麗で感動したのを覚えてる。
その時、不思議だなって思ったんだ。
東京っていう街を一瞬で好きになって、この街で暮らしたいって来るたびに思ってた。
帰る時は、何だかいつも後ろ髪を引かれる思いで、何かを置いてきたようなそんな気持ちになってた…」