いつか、君の涙は光となる
「駄目だ……大切過ぎて、手にするのが怖い」
「詩春」
「もし、吉木のことを又傷つけることをしてしまったら、私もう二度と一緒にいられな」
「俺がお前を守りたい理由は、お前の弱さを知ってるからだよ」
「なにそれ……」
「あんなに傷つけあったのに、それでも今こうして隣にいることを、素直に自信に変えられないのか」
胸の中で黙り込んでいる私に、吉木ははっきりとした口調で伝えたんだ。
「何があっても守るから、大丈夫だよ」
……最近知ったけれど、大丈夫だよって言葉、君はよく使うんだ。全く根拠のない言葉なのに、魔法みたいな言葉だ。たった三文字の言葉なのに、本当にどうにかなる気がしてくる。
この人と一緒なら、人生のほとんどが大丈夫な気がしてくる。そんな風に信じられるのも、私が君の弱さも知っているからだろうか。弱さを支え合って生きていくことが、強さに変わっていくのだと、君が教えてくれたんだ。
「……一緒にいたい。ずっと」
彼の胸の中でぽつりと呟くと、うん、と彼は優しく頷いた。多分君のいない世界では、私はもう生きていけないから。どんな悲しいことも、辛いことも、苦しいことも、あの過去を乗り越えられた私達なら、きっと大丈夫。そう思える。私はあなたと、生きていきたい。
自分の気持ちを認めたら、するすると優しい気持ちが体の中に流れてきた。不思議だ。吉木の言葉はぶっきらぼうなのに、どうしてこんなにも胸に響くんだろう。
そっと顔を上げて、吉木の顔を見上げる。その瞬間風が吹いて、桜の木から大量の花びらが彼の背後に舞い上がった。ひらひらと舞い降りた一枚の花びらが、あなたの睫毛に止まった。
「はは、なに泣きそうな顔してんだよ」
そのあまりの綺麗さに、胸が締め付けられて、好きも愛してるも越えた言葉が溢れ出た。
「……私も守りたい。吉木を」
そう言ったら、君は泣きそうな顔をして笑ったんだ。吉木が、ありがとうと言って瞼を閉じた瞬間、睫毛に乗っていた桜の花びらがほろりと落ちた。まるで涙を流すかのように、それはゆっくりと足元に降りていく。