いつか、君の涙は光となる
「また会えるよね? 詩春」
うん、と頷いた私の顔は、きっとひどい顔をしているに違いない。私は、自分の過去がバレて万里に嫌われることが怖くて、逃げる道を選んだ。このとき、引越し先や引越し日を聞いてこなかった万里の気持ちを思うと、胸が張り裂けそうになる。
ごめん。弱虫でごめんね、万里。
「宗方くんも、詩春に伝えることがあるんじゃないの」
万里は、気まずい空気をたちきるように、すぐ真後ろで後輩と話していた宗方くんを捕まえた。
宗方くんは、えっと声を上げて焦ったように私の方を振り返った。
「あ、詩春、えっと……。あ、俺も東京の大学行くから、会おうな」
「今言うの、そういうことじゃなくない?」
「こ…、心の準備的なものがあるじゃんか」
「声小さいんですけど」
万里が口を尖らせて、宗方くんの背中をバシッと叩いている。そんな二人の頭上に浮かぶ数字を見て、私は強く強く願った。
どうか、彼等の数字がこれ以上増えたりしないように。
どうか、優しく光にあふれた未来が、この先も彼等に訪れますように。
涙を流さなくていい、穏やかな日々がいつまでも続きますように。