いつか、君の涙は光となる
「泣いてた」
「え……、嘘」
「泣いてたから、キスした。寝てる間に」
「え、嘘!?」
「語彙がねえのか、お前は」
吉木は冷たくそう言い放ってから、どうした? と私の前髪を耳にかけた。
髪の毛が涙で頬に張り付いていたことにその時気づき、私は本当に涙を流していたのだと実感した。
「卒業式のこと、思い出してた……」
「へえ、どんな?」
「万里と宗方くんと、お別れしてて、もう二度と会えないかもってその時は思ってたから」
「会えてんじゃん。今は」
「そうだね、そうなんだよね。良かった……」
「変なやつ。まだ寝ぼけてんのか」
そう言って、吉木が私の頬をつねった。痛い。こっちが今現実なのだ。そう思うと、どうしようもない安堵感が胸に広がった。
誰かとの縁を手離すのは、とてもとても簡単で、楽なことで。
今目の前にいる吉木とずっと一緒に居られる保証なんてどこにもなくて。
そう思うと、ただ伝えるしかないのだ。波のような日々の中で、予測できない未来の中で、今君と一緒にいる意味を、伝えるしかないのだ。