いつか、君の涙は光となる
「こんなものまだ持ってたの。早く捨てなさい」
「……いいよ、捨てて。別になんとなく音聞いてただけだし」
平然とそう言うと、母はその貝をエプロンの大きなポケットにしまって、部屋から出て行った。ようやくまた部屋に一人きりになった私は、ふぅと小さく溜息をつく。
「ほっといてよ、もう」
つぶやいた一言が、しんとした部屋に転がっていく。寝汗をかいたせいで、髪の毛が首に張り付いて気持ちが悪い。
あっという間に夏休みに入ってしまった。今日は土日だから部活は休みで、することも特にない。ミントグリーンの薄いカーテンの隙間から日差しが漏れている。
カーテンの隙間をしっかりと閉めようとしたとき、ミニテーブルの上でスマホが鳴った。
『なにしてんの?』という、簡潔なメッセージが沙子から届いた。沙子からこんなメッセージが届くなんて珍しい。そう思いながらも、私は何もしてないよ、暇、と返信をした。私たちは、三十分後に駅前で待ち合わせることになった。