いつか、君の涙は光となる

 よ、と手を挙げている沙子は、アゴ先まであったボブをショートカットにしていた。
「あれ、髪の毛切ったの?」
「そ、さっき思いつきでバッサリ」
「へえ、いいね、似合ってるよ」
 そう言うと、沙子は目を細めてありがとうと言った。沙子は私服姿もボーイッシュで、サバサバした性格と合っているといつも思う。有名ブランドのロゴが入った黒いTシャツに、細身のジーズを合わせている。
 楽だから、という理由で適当なネイビーのポロシャツワンピースを着ている私とは、かっこよさが全然違う。
 そんな彼女に一瞬見惚れていたが、頭の上の数字が百五十一になっていることに気づき、私は彼女に何かあったことを察した。

「とりあえず、カフェ行く?」
そう言って先を歩く沙子のあとをついて、私は慌てて定期カードにチャージをした。

 駅からバスで十分のショッピングモールにつくと、よくいくパスタ屋さんの中に入った。土日で夏休みということもあって、いつも以上に混んでいる。メニュー表を私に向けて「何にする?」と言ってくる沙子は、やっぱり普通の女の子と少し違って落ち着いているなと思ってしまう。

「なんか、髪切ったら益々イケメンになっちゃったね。女子校行ったらモテモテで大変だよそれ」
「いや、女にモテても嬉しくないから」
 苦笑しながら、沙子は店員を呼んで私の分のトマトパスタと、自分のジェノベーゼパスタを頼んだ。ピンクの壁紙が張り巡らされた店内とクールな見た目の沙子、という組み合わせが意外で少し笑えてしまう。
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