いつか、君の涙は光となる
「あのさ、沙子、何かあった?」
「え……、なにかって」
「なんか、元気ない気がするし」
「はは、詩春って本当挨拶みたいにその言葉言うよね。なんかあった? って」
 思わぬ言葉が返ってきたので、私は固まってしまった。なんだか、沙子は少し苛立っている気がする。
「なんかあった? って聞かれて答えられる人とそうじゃない人がいることも知っておきなよ」
「ご、ごめん……」
「友達って言っても、他人なんだからさ。テリトリー的なのあるじゃん、詩春も。まあ、万里は知らんけど」
 そう言って、沙子は再びフォークをくるくると回転させる。私は沙子にこうして冷たく言われることが初めてだったので、ショックでしばし茫然としてしまった。友達は他人、という考えを持っている沙子にショックを受けたのか、テリトリーに入ってくるなと遠回しに怒られたことにショックを受けたのか、自分でも分からなかった。でも、羞恥で顔がかあっと熱くなるのを感じていた。

「ごめん、冷たく言いすぎた。……とにかく私は、今日楽しく詩春とご飯食べたかっただけ。それだけだからさ」
「うん、分かってるごめん……」
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