いつか、君の涙は光となる
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あの頃、親や友達に「優しいね」と言われることが、自分の生きていく糧だった。優しい人間でいることが、私のような人間が生きていく上で重要なことだと思っていたんだ。
「でさ、昨日も会えないってドタキャンされて。大学生ってそんなに忙しいわけ」
大学生と付き合っている万里(マリ)は、荒々しくぺしゃんこのスクールバッグを机に置いた。朝からピリピリした様子でやってきた万里子に、親と絶賛喧嘩中の沙子(スナコ)はうんざりした顔で落ち着きなよと、宥める。
朝礼が始まるまでの間、私達は沙子の机の近くに集まって、昨日の夜までメッセージを飛ばしあっていたことを直接口で伝え合う。
六月の湿気に負けた万里の長い髪の毛は、いつものふわっとしたカーブを完全に失い、襟足の髪は膨れあがり毛先はあちらこちらに散っていた。