いつか、君の涙は光となる
第二章
私を見て
私を信じると言った吉木の声が、なぜか心のバランスが崩れそうになった時、ふと蘇るようになった。信じるしかないだろ、というぶっきらぼうな言葉なのに、死ぬまで隠し通そうと思っていた能力がバレた相手が、彼でよかったとどこかで思っているのかもしれない。どうかしている。
彼が怖いのに、しかもちっとも優しくされているわけでもないのに、私はどうして吉木の言葉に弱い。彼が何かを言うたびに、私のでこぼこした歪な心は、ぐわんぐわんと音を立て激しく揺れるのだ。
「詩春と万理、今度の三連休の土曜日空いてる?」
部活動停止の騒ぎも落ち着いた頃、宗方君が唐突に問いかけてきた。ちょうど今から昼休みで、私達は購買に向かおうとしていたけれど、なにやら男子同士で盛り上がっているところに呼び止められてしまった。私は人気のコロッケパンが売り切れないか気が気じゃなかったけれど、万理がすぐにその群れに入ってしまったので仕方なく足を止めた。
「なになに、どっか遊び行くのー?」
「俺の兄貴がキャンプ好きでさ、良かったら万理達も泊まりで行かねえ?」
「えー! 泊まり!? 何それ楽しそう」
「兄貴が車も出すし、近場だからさ。あ、でも、ちゃんと親の許可は取ってよ?」