いつか、君の涙は光となる
 
 一方、沙子は顎先でキリッと揃えたボブ姿で、晴れの日とまったく変わらない。 私は、昨日寝落ち押してしまった課題の最終問題を解きながら、容姿も性格も正反対の彼女たち二人の会話を聞き流していた。
「バイトバイトって、それ全部飲み会に消えてるわけでしょ? サークルなんか辞めてそのお金私のデート代に使えっての」
「まあ、いずれ私達も大学生になれば気持ちわかるでしょ。万里なんてとくに飲んで騒いで遊び呆けそうだし」
「沙子って、本当に冷たいよねそういうとこ」
 いつもの展開で、空気が悪くなりかけたそのとき、私は、万里の手に触れて、静かに問いかける。
「万里、彼にムカつくこと言われたの?」
「え、なんで」
「なんか、目が赤いから。昨日泣いた?」
 そう言うと、万理は感情を閉じ込めていた蓋を一気に開けて、聞いてよ、と次々と彼の愚痴を話し始めた。一人暮らしの彼の家にはサークルの女友達がしょっ中出入りしていること、それが嫌だと伝えたら逆ギレされたこと、最近空気感があまり良くないこと、昨日また喧嘩して泣いたこと。全てを話し終えた彼女は、私に向かってこう言うのだ。
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