いつか、君の涙は光となる

「おはようございます、今日のリストどこですか」
「おー、詩春ん、今日も若いのに暗いね」
「仙崎さん。若いのに暗いねって、対義語になってないですけど」
私のことを馴れ馴れしく呼ぶこの人は、自分のチームの上司だ。年は三十代前半くらいの女性で、頬骨あたりでカットされた前髪をかきあげる度に色気があたり一面に飛んでいくような美人だ。私が回したバトンを、ほぼ百パーセントの確率で受注まで繋げてくれる頼れる上司で、私はこの人が苦手だけど信頼はしている。

「この会社唯一の学生アルバイトちゃんだからね、構いたくなっちゃうのよ許して」
そう言って、ホチキス留めされたリストをファイルごと渡す。いつもはここですぐに自分の席に戻るが、私は意を決して言い出しにくいことを口にする。
「あの、仙崎さん、申し訳ないんですけど、今日十八時で上がることは可能でしょうか。急用ができてしまい……」
「急用? 家族のこと? 学校のこと?」
「何年も会ってなかった友達から連絡があって……」
「あんた友達いたの」
仙崎さんは大きな目を見開いて、無神経な言葉を私にぶつけた。一応います、と小声で答えると、彼女はなぜか安心したように、へぇと声を漏らした。
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