いつか、君の涙は光となる

隠した想い


 もうすぐ夏がやってくる。そう予感する度に、心がずしっと重たくなるほど、夏が嫌いだ。
 母が再婚するまでは、毎年夏は海に行っていた。あの頃はきっと、夏が大好きだった。

「蒸し暑い……。雨の日の倉庫掃除とかマジ鬼なんだけど」
 同じ水泳部の沙子が、低い声で文句を言いつつ床を履いている。五年前、共学になって部活動が盛んになってから、後付けのように作られた倉庫には、色んな部活のスポーツ用具が乱雑に置かれている。横にだだっ広い倉庫を、カーテンで仕切っているだけだから、着替えはプールのそばにあるロッカーで済ませている。
 私達水泳部の部員は全員で七名で、少数精鋭だからか、先輩たちの目がとても厳しい。当たり前のように全て任された倉庫掃除を初めて、すでに二時間が経過している。歩く場所に置かれているものは要らないものとみなして処分すると言われて、期日ギリギリで沙子と二人で今片付けているのだ。
< 8 / 119 >

この作品をシェア

pagetop