いつか、君の涙は光となる

「たく、先輩達も手伝ってくれればいいのに」
 活動はゆるいくせに、やたらと先輩ぶる先輩たちの存在を疎む沙子は、荒っぽく掃除用具をロッカーにしまう。
「ゴミ袋職員室から貰ってくるね。すぐ戻ってくるから」
「ありがとう、よろしく」
 そう言って、沙子は部室から出て行った。今日は大雨で、外の部活動の子達は体育館での練習だから、倉庫には誰もいない。薄暗い倉庫の中で、蛍光灯がチカチカと点滅している。先輩達の私物を仕分けながら、私は外から聞こえる雨音に耳を傾けていた。ザーッという耳障りな音の中に、微かに足音を感じ取り、私はドアを見つめる。すると、間も無く荒々しくドアが開いた。そこには、テニスラケットを背負った吉木が立っていた。
 私はすぐに目をそらして、それから、なぜか存在を消すように息を潜める。先にいたのは私なのに、なぜこうも気まずい気持ちになるのか。
彼は、私を一瞥してから、カーテンを仕切った向こう側でテニスボールを乱雑に籠の中に詰め込んでいた。
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