いつか、君の涙は光となる
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ひとつひとつ、自分の気持ちを整理してみる。そういう時間を、きっと私は今まで取ったことがなかった。一歩一歩山を登るように、焦らず着実に自分と向き合うような、そんな時間を取ったことがなかった。
この能力が芽生えてから、もう十年が過ぎていた。人の涙が見えてしまう力を手に入れた代わりに、自分はどんなに辛いことがあっても涙を流せなくなってしまった。
吉木も、泣いた回数は一回と出ていたけれど、涙を流せない理由があるんだろうか。
知りたい。君のことを分かりたい。自分で吉木のことを恐れて拒否したくせに、よくそんなこと言うよと、罵倒されるだろうか。もう遅いかな。分からない。でも足は止まらない。
「わっ……、痛!」
雨に濡れた苔で滑りやすくなり、岩場で足首をひねってしまった。もうすぐ吉木がいるかもしれない山頂エリア付近なのに、最悪だ。
私は、鞄からハンカチを取り出し、持って来た水でそれを濡らした。湿布がわりに足首に巻いて、再びすぐに歩き出す。
会いたい。会って謝りたい。あの日プールサイドで拒絶してしまったことも、キャンプの日に何も知らないまま君に当たってしまったことも、君自身のことを分かろうと努力しなかったことも。
雨が冷たい。歩く度に足首に痛みが走る。今君は、どこにいるの。どうか生きていて。どうか生きていて。どうか生きていて。
痛みに耐えて歩き続けると、ようやく樹林帯を抜け、崩落箇所に注意が必要な山頂エリア付近に着いた。山の向こうに夕日が沈みかけている。冷え込む夜までに見つけなければいけない。私は気合を入れ直し、慎重に足を進めた。
明らかに傾斜がきつくなっている。息も上がる。まだ緩やかな山しか登ったことがない私に、吉木を助けることができるだろうか。そう不安に思った時、土が不自然に剥き出しになった壁面を遠くに見つけた。今にもまた土が崩れ落ちてしまいそうなその場所に、蹲っている何かが見える。
もしかして。そう思って、私は今までにないくらい大きな声で彼を呼んだ。