【BL】好きになってよ。
拓海がやっと歩き出したのを確認して俺も歩き出す。
そのまま階段を上がって教室に行こうとすると、階段の横に恵がいた。
目が合うと、こっちに近付いてくる。
「おはよう、慎也」
「...おう」
拓海を見たばかりだからか、気になる。
「何の用だ」
何かを企むみたいに愛想笑いをしている恵に声をかけると、恵は驚いた顔をした。
「おや、珍しいね。
君から話しかけるなんて。いつもだったら軽く挨拶してすぐ行っちゃうのに
優しいねぇ、“しんちゃん”」
どこか挑発的な笑顔でそう言ってくる恵。
「キモ。
んな呼び方すんなよ」
あの人同じ言葉を言って心がズキッとする。
言葉を言うだけでも傷つくのか...。
「“キモい”ねぇ...
そうやって拓海を傷つけたんだ?」
「...っ、」
いきなり恵が知るはずもない、自分の弱いところを突かれて、動揺を隠せていないのが自分でもわかる。
大体、なんでお前が知ってるんだ。