【BL】好きになってよ。
「今日一緒に帰ってくれてありがと」
学校から出てしばらくして、途中の公演を通りながら言葉を出す。
「いつでも帰ってあげるよ。だからもう慎也と帰るのはやめなよ?」
けいちゃんは真面目な顔をしながら冗談みたいなことを言った。
「え、えと、それは...」
その言葉が本当の言葉なのか、冗談の言葉なのかよく分からない。
「ふは、本気にしなくていいよ」
けいちゃんはいつも通り笑う。
「なあ拓海、言っていいよ」
「え?」
ふっとけいちゃんの顔から笑顔が消えて、さっきみたいな真面目な顔になる。
「今日はそのために誘ってくれたんだろ?」
「っ、」
けいちゃん。
いつもごめんね。相談に乗ってくれたりもしたし、僕を大事にしてくれた。
応えられなくてごめんね。
「ごめん。けいちゃんごめん。
僕、けいちゃんと付き合えない。
僕はまだ、しんちゃんのこと好きだから。どんなにひどいこと言われても好きだから。」
どうしたら、どんな風に言ったらけいちゃんが傷つかずに済むのかなんてわからない。
ひとまず、本当のことを真っ直ぐ目を見て言わなくちゃ。
言葉の最後は少し震えてしまったけど、何とか言えた。
「うん。だと思った。」
けいちゃんは、僕の言葉の余韻に浸るみたいにゆっくり目を閉じて、ゆっくりと開けた。