先輩から逃げる方法を探しています。
隣に目を向けると、耀先輩の時とは一転して、一歩後退り、先輩を見ているりりなと香澄がいた。
「えっと…先輩も耀先輩に呼ばれて来たんですか?」
「そうだよ。もってことは翼ちゃんも?」
「はい。友達と一緒に」
そう言うと、私からりりなと香澄に目を向ける。
狼に見つかってしまった子ヤギのように2人して小さくなっている。
その2人を見て先輩はきっと嫌な顔をするだろうと思っていたのだが、その予想は外れた。
「初めまして~。俺は松木春佳って言うんだ」
笑顔でそう話し出す。
そんな先輩の対応にやはり驚きを隠せないようだ。
2人とも声が出ていない。
「えっと、内田りりなと北里香澄です。2人とも私と同じ1年生です」
「そっか~。じゃあ…うーん……りりーとかすみん、かな。よろしくねぇ」
「り、りりー…?」
「かすみん…?」
ようやく2人の口から出てきた言葉はそれぞれにつけられたあだ名。
そういえば先輩って佐藤先生のことは『しゅがーちゃん』と呼んで、耀先輩のことは『耀ちん』と呼んでいる。
あだ名をつけるのが好きなんだろうか。
…私はただのちゃん付けだけど。
2人のそんな反応に眉を落とした。
「あれ?嫌だった?」
「えっ…いっいえ!全然!」
「わ、私も構いませんわっ!」
「そっかそっか~良かった」
「おっ、はるー!ちゃんと来たか」
電話が終わったらしく、戻って来た耀先輩。
「耀ちんが絶対に来いって言ったからねぇ。まさか翼ちゃん達までいるとは知らなかったけど」
「折角遊ぶんだし、人数が多いほうがいいだろ?」
「まぁ…」
「ってことで早速、海に行こう!着替えたら海の家に集合ってことで」
水着を持って来るようにと言われていた時点で察してはいたけど、やっぱり海で遊ぶんだ。
ホテルの目の前には大きな海が広がっており、歩いてすぐに海岸へと辿り着ける。
耀先輩から部屋の鍵を受け取り、先輩達と私とりりなと香澄で別れた。