先輩から逃げる方法を探しています。


着替えが終わり、部屋を出ようとした時、りりなと香澄に呼び止められた。


「翼ちゃん。あの……」


言葉を詰まらせるりりなと困った顔をしている香澄を見て、すぐにわかった。

きっと、「関わるのはやめたほうがいい」と忠告をしてくれていたのに、私がまだ先輩と関わっていたからだろう。


「2人ともごめんね。困らせちゃって。まさか先輩…松木先輩まで一緒とは知らなくて」


私は忠告されたように関わらないようにしようと思っていた。

だから先輩にも「関わらないでください」と言ったこともある。

だけど、先輩はその言葉を聞いてくれなくて…。

私も結局、色々とその場の状況に流されてしまって、休み時間どころか、体育祭や部活や合宿までも一緒にいた。

合宿の時に、もう極力は関わらないようにしようと再度心に決めたけど…あの一夜のせいでそれが出来なくなってしまった。


「きっと、2人は怖いだろうし、嫌かもしれない。…でもね、わかって欲しいことがあるの」


私が泣き止むまで黙って傍にいてくれて。

背後から伝わってくる体温は温かくて、優しくて、心地よくて。

泣き止んだ後は手を引き、部屋まで連れて行ってくれた。


「松木先輩は噂のような人じゃないよ。とっても…いい人だから」


本当は、あの一夜のせいだけじゃない。

出会ってから、少し話をするようになった頃から気づいていた。

からかったり、テキトーな所はあるけど、優しくて、いい人だと。

だから私は関わることをやめることが出来なかった。


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