先輩から逃げる方法を探しています。


2人の背中を見送ると、耀先輩は再び此方へと振り返った。


「耀先輩、私に話というのは?」

「実はさ…」


耀先輩が突然、遊びに誘ってくれた理由。

それは先輩のため。

私に電話を掛けてくる2日前のこと。

耀先輩は仕事が終わり車で帰っていると偶然、先輩の後ろ姿を見つけた。

合宿後、連絡はしていたものの実際には会っていなかった。

久しぶりに会った嬉しさから、耀先輩は車から降りて急いで先輩を追いかけた。


「はーるー!!」


名前を呼ぶが、先輩は振り返らない。

聞こえていないのかとまた名前を呼ぶが、やはり先輩は振り返らない。

自分より少し高めの身長。

そして茶色の髪に所々、赤色と緑色のメッシュが入った目立つ髪。

人違いということはないだろう。

耀先輩は首を傾げながら、そのまま先輩の元へと駆け寄った。


「はる。俺だよ、よ…う……」


先輩の顔を見た瞬間、言葉を失う。

あざがあったり、切り傷付近には荒く血を拭いた痕があったり…。

なによりもいつもと雰囲気が違った。

怖い、と感じてしまう程だ。


「はる…?」


ようやく声が聞こえたのか、耀先輩の方を向いた先輩と目が合う。

すると、先程までの雰囲気は嘘のようになくなり、いつもの先輩に戻った。


「え?耀ちん?急にいるからびっくりした~」


本当に聞こえていなかった様子で目をぱちぱちとさせ、驚いた顔を見せる。


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