先輩から逃げる方法を探しています。
先程までの雰囲気は気のせいだったのかと、いつもの先輩の様子に安堵の息を吐く。
「えーっと…さっきから名前呼んでたけど…」
「ほんと?ごめんねぇ。考え事してたから気づかなかったや。で、どうしたの?」
「どうしたのって…」
耀先輩は逆に自分が聞きたいくらいだった。
そのあざや傷は一体どうして出来たのか、と。
言葉を止めた耀先輩を不思議そうに見る先輩の手を取り、車の方へと戻る。
先輩は戸惑いつつも、耀先輩に手を引かれるまま。
車に乗り、治療をしている際に怪我の原因を聞くと「喧嘩したから」と。
先輩は前々から喧嘩をして怪我をしていることは多々あった。
だが、ここ最近…部活を始めてからはほとんど目立った怪我はなくなっていたはずだ。
きっと、理由はわからないが、喧嘩をしなくなったからだろう。
それが今になって、しかもいつも以上に酷い怪我になっているなんて一体何があったんだろう。
「俺ははるが無意味に喧嘩なんてするとは思えないんだよ。だけど、俺が理由を聞いてもしらばっくれるし…」
だから耀先輩は急遽、遊ぶ予定を作った。
とりあえずこの2日間で様子を見て、出来れば私にも先輩を気にして見て欲しいらしい。
「翼は俺よりはるとの付き合い長いし、色々気づけることがあるかなと思ってな」
「わかりました。私も気にかけてみます」
「助かる。ありがとな、翼」
「いえ」
私も心配…少し、少しだけ、だけど……心配だし…。