先輩から逃げる方法を探しています。
校舎裏にある倉庫。
部活が始まってからというもの来なくなっていたため、凄く久しぶりだ。
そっと顔を覗かせると、倉庫に背を預けて座っている先輩がいた。
膝に子猫…じゃなく、見ない内にもう猫になっていた。
猫を乗せて、先輩が頭を撫でると嬉しそうな鳴き声が聞こえる。
「先輩」
そう声を掛けると、猫から此方へと顔を向ける。
私と目が合うと、膝に乗せていた猫を降ろし、手招きをして隣を叩いた。
隣に座れということだろう。
近づき、座ろうとしゃがんだ瞬間に腕を掴まれ、そのまま思いっきり引っ張られる。
「えっ!?」
気づいた時にはぴったりと私と先輩の体はくっついていて、先輩を下敷きにうつ伏せになっていた。
その上、先輩の腕で完全に身動きが取れない状態にされている。
「せっ…せ、先輩……!?」
「やっと翼ちゃんに会えた」
「だからってどうしてこんなっ……離してくださいっ!!」
「だーめ。翼ちゃんが俺に意地悪したからお返し」
「意地悪?そんなことした覚えないんですけど」
なんせ会ったのは約2週間ぶりだ。
先輩に意地悪なんてした覚えは全くない。
「俺はずーっと翼ちゃんからの連絡を待ってたのにさぁ…全然くれないんだもん」
「そ、それは…」
何度か連絡をしようとは思った。
しようとは思ったけど……いざしようとなると、なんの話題を出せばいいのか思いつかず仕舞いだった。
「おはようございます」「こんにちは」「こんばんは」
挨拶をしたあとの続きが全く思いつかなかった。