先輩から逃げる方法を探しています。


猫は私のことを覚えていたのか、寄ってくると私の足に顔をすりすりと擦り付けてきた。

私は猫を撫でながら、話を始めた。


「先輩、耀先輩と最近会ってます?」

「会ってないよ。忙しいみたいで連絡もあまりできてないなぁ」

「そうなんですね」


耀先輩、やっぱり忙しいんだ。

夏休みの間は特に忙しいと言っていた。

夏フェスや音楽特番の生出演。

地上波の番組からネット番組、CMでも耀先輩の姿を見る。

この前は雑誌の撮影って言ってたし…本当なんでもやっていて忙しそうだ。

先輩は私だけじゃなく、耀先輩にも会っていないし、連絡もあまりできていない。


「あの……喧嘩は…しました?」


私は猫を撫でる手を止め、先輩の方を向いてそう問いかける。

もし喧嘩をしていたとしても、責めるわけにはいかない。

私が連絡をしなかったのが悪いんだから…。

先輩は小指を立て、私の方へと手を伸ばすと、私の小指と自分の小指を絡ませた。


「約束したからしてないよ」

「約束…」


そう言われ、海で話していた時のことを思い出す。

「約束」と言葉にしてはいなかったけど、確かにあの時先輩はこうして私と自分の小指を絡ませていた。

それが「約束する」ってことだったんだ。


< 126 / 148 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop