先輩から逃げる方法を探しています。
猫は私のことを覚えていたのか、寄ってくると私の足に顔をすりすりと擦り付けてきた。
私は猫を撫でながら、話を始めた。
「先輩、耀先輩と最近会ってます?」
「会ってないよ。忙しいみたいで連絡もあまりできてないなぁ」
「そうなんですね」
耀先輩、やっぱり忙しいんだ。
夏休みの間は特に忙しいと言っていた。
夏フェスや音楽特番の生出演。
地上波の番組からネット番組、CMでも耀先輩の姿を見る。
この前は雑誌の撮影って言ってたし…本当なんでもやっていて忙しそうだ。
先輩は私だけじゃなく、耀先輩にも会っていないし、連絡もあまりできていない。
「あの……喧嘩は…しました?」
私は猫を撫でる手を止め、先輩の方を向いてそう問いかける。
もし喧嘩をしていたとしても、責めるわけにはいかない。
私が連絡をしなかったのが悪いんだから…。
先輩は小指を立て、私の方へと手を伸ばすと、私の小指と自分の小指を絡ませた。
「約束したからしてないよ」
「約束…」
そう言われ、海で話していた時のことを思い出す。
「約束」と言葉にしてはいなかったけど、確かにあの時先輩はこうして私と自分の小指を絡ませていた。
それが「約束する」ってことだったんだ。