先輩から逃げる方法を探しています。
去って行く男達から2人に目線を移すと、真っ先にりりーと目が合う。
びくりと肩を上げ、すぐに目を逸らされた。
先程、絡まれていた時となんら変わらない。
やっぱり俺もまだあいつらと同レベルってことなんだな…。
「松木先輩。助けていただきありがとうございましたわ」
「ううん。それより何もされてない?大丈夫?」
「え、えぇ…」
「そっか。良かった」
かすみんはさっき会った時とは違って怖がっている様子はない。
むしろ凄く目を合わせて見られている。
…もしかして睨まれてるのかな。
「……松木先輩。先程は失礼な態度を取ってしまい、申し訳ありませんわ」
「え?」
「噂などよりも翼の言う通りだと私は思いましたの」
「翼ちゃんの言う通り?何が?」
「松木先輩は噂のような人ではなく、いい人だと。翼はそう言ってましたの」
翼ちゃん、俺のことそう思って、しかもそう2人に話してくれたんだ。
……やばい。にやけてしまいそうなくらい嬉しい。
誤魔化すために俺は口を開いた。
「でもそういう翼ちゃんのほうがすごーくいい子だけどねぇ」
「ふふっ…当然ですわ。私の自慢の友人ですもの」
「3人ともお待たせ」
そう声が聞こえ、嬉しそうに笑うかすみんから後ろへと顔を向ける。
そこには部屋を出る時までとは違った髪型をした耀ちんがいた。
「え、耀ちん?どうしたの?その髪型は」
「あ、あぁ…これ。翼がバレるから眼鏡だけの変装はやめろって言うから…」
「それで遅かったわけだ?」
「そ、そうそう」
「…ふーん。そっか」
どうやら遅かった理由はそれだけではないらしい。
嘘をつくのが下手、というよりは耀ちんが嘘をつく時の癖を知っているからわかった。
2人で何やってたんだろ。
まぁ嘘をつくってことは聞いても教えてくれないんだろうけど……気になる。