先輩から逃げる方法を探しています。


だけど女の子はどちらでもなく、俺の顔をじっと見てきた。


「なぁにそんなに俺のこと見つめちゃって。欲しいの?」

「いらないです」


俺の手を押し返し、立ち上がる。

怒っているのか、戸惑っているのか、怖がっているのか…

表情が読めない。

こんな子を見るのは初めてだ。

どうすればこの無表情を崩せるのだろうか。

ただそこに興味が湧く。


「え~いらないの?じゃ俺が食べちゃおーっと」

「えっ…それ動物用の餌なんじゃ?」

「そうだよ。冗談じょうだーん。本気にしちゃった?」

「し…してないです」


からかってみたものの、変わらず無表情。

だけど、1つだけ変化を見つけた。

それは目を逸らしたこと。


「あれ?帰っちゃうの?」


女の子は帰ろうと一度は後ろを向いたが、また振り返って俺の顔をじっと見てくる。

暫くすると、溜め息を吐きつつ鞄を漁り、取り出した物を差し出してきた。


「え?何これ~?」

「絆創膏です。それでは」


そう言うと、すぐに立ち去って行く。

絆創膏…。

おそらく俺の顔の傷を見て絆創膏をくれたのだろう。

冷めた子なのかとも思ったが、どうやらそうではないらしい。

< 41 / 148 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop