先輩から逃げる方法を探しています。
だけど女の子はどちらでもなく、俺の顔をじっと見てきた。
「なぁにそんなに俺のこと見つめちゃって。欲しいの?」
「いらないです」
俺の手を押し返し、立ち上がる。
怒っているのか、戸惑っているのか、怖がっているのか…
表情が読めない。
こんな子を見るのは初めてだ。
どうすればこの無表情を崩せるのだろうか。
ただそこに興味が湧く。
「え~いらないの?じゃ俺が食べちゃおーっと」
「えっ…それ動物用の餌なんじゃ?」
「そうだよ。冗談じょうだーん。本気にしちゃった?」
「し…してないです」
からかってみたものの、変わらず無表情。
だけど、1つだけ変化を見つけた。
それは目を逸らしたこと。
「あれ?帰っちゃうの?」
女の子は帰ろうと一度は後ろを向いたが、また振り返って俺の顔をじっと見てくる。
暫くすると、溜め息を吐きつつ鞄を漁り、取り出した物を差し出してきた。
「え?何これ~?」
「絆創膏です。それでは」
そう言うと、すぐに立ち去って行く。
絆創膏…。
おそらく俺の顔の傷を見て絆創膏をくれたのだろう。
冷めた子なのかとも思ったが、どうやらそうではないらしい。