先輩から逃げる方法を探しています。
そんな先輩を見てか、雨谷先輩はしょんぼりと肩を落とす。
「えぇっと……なんかごめんな?俺みたいな奴が入ると迷惑だよな。折角、友達になれると思ったんだけど…」
「………ち」
先輩の呟くような小さな声が聞こえ、先輩の顔を再び見ると、先程までの不機嫌さはどこへいったのやら…
目をキラキラとさせ、一歩一歩、雨谷先輩の元へと近づいた。
そして雨谷先輩の前に立つと、またいつものように気の抜けたような話し方に戻り、ご機嫌そうな笑顔を見せる。
「俺は松木春佳っていうんだ~。気軽にはるって呼んでねぇ」
「えっ…俺、邪魔じゃ…ないのか?」
突然の先輩の変わりように戸惑う雨谷先輩。
私もこの変わりようには驚いている。
一体、急にどうしたんだろう先輩。
「邪魔なわけないじゃ~ん。同じ学年同士、これからよろしくねぇ」
「あ、あぁ!よろしくな、はる」
先輩の返事を聞き、雨谷先輩も嬉しそうに笑顔で返事をする。
そして3人の目線は私の方へと一斉に移された。
「……1年の伊坂翼です」
「翼ちゃんはこう見えても優しいから大丈夫だよ~」
「そうそう!伊坂さんはこう見えてもとってもいい子だから安心して!」
褒められているのやら…貶されているのやら…。
雨谷先輩は手を差し出し、私にも笑顔を向けた。
アイドルの笑顔は眩しい……。
「よろしくな」
「よろしくお願いします」
こうして校内で目立つ存在が2人もいる天文部の部活動が始まったのであった。