先輩から逃げる方法を探しています。
「じゃ、行こうか」
「え?雨谷先輩…」
じゃんけんの結果、私は雨谷先輩とペアとなり、晩ご飯の担当となった。
出掛ける準備をし、いざ行こうとした雨谷先輩の姿を見て私は足を止める。
制服を着替え、いつもはしていない眼鏡…度は入っていないようだから恐らく伊達メガネだろう。
ただその伊達メガネを掛けているだけ。
自分が人気アイドルだと自覚していないのか、それともこの伊達メガネだけで変装していると思っているのか、謎である。
帽子やマスクすらしていないため、どう見ても雨谷耀だとすぐにわかる。
「どうした?」
「それ…変装しているつもりなんですか?バレバレですけど」
「こういう自然体のほうが意外とバレないもんなんだぞ」
そう言って得意気に笑って見せる。
冗談で言っているのやら、本気で言っているのやら。
冗談ではなく、本気なのであれば雨谷先輩は結構抜けていると思う。
「雨谷先輩、せめて帽子は被ってください」
「このままじゃ駄目?」
「駄目です。バレるに決まっています」
「えーそう?でも帽子とか持ってきてないし…」
どうやら本気で伊達メガネだけでバレないと思っていたらしい。
「…ちょっと待っててください」
溜め息を吐きつつ、私は部屋へと戻った。