先輩から逃げる方法を探しています。
部屋へと戻り、帽子を手に取る。
昼は日が照りそうだと思って持って来ていて良かった。
とりあえずこれを被ってもらうしかない。
キャップだし、男女兼用できそうなデザインだし…まぁ大丈夫だよね。
部屋から出ると、目の前には同じく部屋から出てきた先輩と目が合う。
「あれ~?翼ちゃんまだ行ってなかったの?あ。もしかしてやっぱり俺とペアが良かった?」
「帽子を取りに来ただけです。では」
「あー待って待って。翼ちゃん」
「わっ!?」
立ち去ろうとした私の手首を掴み、自分の方へと引き寄せる。
ポケットから取り出した紙を掴んだ私の手のひらに乗せ、握らせた。
「なんですか…これ」
「俺の携帯番号だよ。ちゃんと登録しておいてねぇ」
「…いらないです。先輩に電話を掛けるような用事なんてありませんし」
「えー。用事がなくても毎日掛けてくれていいんだよ…って何その顔ーショックー」
逆手で頬をつついてくる先輩。
全くショックを受けているようには見えない。