先輩から逃げる方法を探しています。
雨谷先輩を待たせているし、先輩の相手はせずに行こう…。
「雨谷先輩を待たせているので早く離してくだっ!?」
また更に引き寄せ、私の耳元に口を近づける。
「俺は翼ちゃんから電話が掛かったらいつでも必ず出るよ」
そう言い、手を離して距離を取ると笑顔を見せた。
「これから毎日掛けてねぇ」
「掛けません」
「モーニングコールとかしてくれたら嬉しいなー」
「しません」
「翼ちゃんからの電話楽しみだなー」
キリがない。無視しよう。
というかそんなに電話したいなら私の番号を聞いて自分から電話をしてくればいいのに……
っていやいや、それもおかしいよね。何考えてるの私。
後ろから「いってらっしゃ~い」という声が聞こえるが、振り返ることなく玄関へと向かう。
手に握らされた紙を一度見て、ゴミ箱へ…ではなく、ポケットへとしまった。
あとで登録したかしつこく聞かれそうだし…仕方ない。登録しておこう。
仕方なく、だ。
「すみません。お待たせしました」
再び外に出ると、腕を組んで壁に背を預けていた雨谷先輩は首を横に振る。
早速、持ってきた帽子を渡し、被ってもった。
うん。これならきっとよく見ないとわからない。
「なんか悪いな、貸してもらって」
「いえ。では行きましょうか」
気を取り直し、売店へと向かった。