先輩から逃げる方法を探しています。
数時間前まではたくさんの人々がいたのに、今は誰もいない。
この星空を独り占めしている気分だ。
よし。ここで写真を……
「っ……!?」
携帯を取り出そうとポケットに手を入れた瞬間。
背後からお腹に腕を回され、もう片方の手で口を押えられた。
一体誰っ…!?
抵抗しようと身体を動かすが、全く力が敵わない。
「んんんーっ……!!!」
口を押えられているせいでやはり声も出ない。
どうしよう!?どうすれば逃げられるっ…!?
必死に考えていると、手に握っている物を思い出した。
そうだ携帯!!
左下に電話帳のショートカットを入れているから、どうにかバレずに操作して連絡が出来れば……。
でも、どうにか電話をすることが出来たとしても、その相手はこんな時間に出てくれるだろうか。
「俺は翼ちゃんから電話が掛かったらいつでも必ず出るよ」
買い出し前に先輩が言った言葉をなぜか思い出す。
どうして先輩の言葉を今、思い出すんだろう。
どうして先輩の顔を思い浮かべてしまうんだろう。
…それに、こういう時だけ先輩を頼ろうとするのはずるい。
「ちょっと翼ちゃ~ん?固まっちゃ駄目でしょ。逃げようとしなきゃ」
そんな声が聞こえたかと思えば、急に口も体も解放された。