先輩から逃げる方法を探しています。
ゆっくりと後ろを振り向くと、そこには見慣れた顔の人物が立っていた。
少しむっとした顔をして此方を見ている。
「こんな時間に1人で出て行ったからお仕置きがてらちょーっと悪戯してみたけど、これじゃもっとしなきゃかな~?」
「……せん…ぱい…」
この状況から考えて、先程まで私の背後にいて体や口を押さえていたのは先輩だったようだ。
「とにかく、こんな夜遅くに黙って女の子1人で外に出て行くなんて駄目だよ。もし今のが俺じゃなかった…ら……」
目が合った途端に言葉を止め、先輩は目を丸くする。
手を伸ばし、私の頬にそっと触れた。
「もしかして結構怖かった?ごめんね」
「え…」
「でもさ、本当に駄目だよ。夜中に1人で出歩くなんて」
私は唖然としたまま、とりあえず頷く。
どうして怖いと思っていたことがわかったんだろう。
表情には出ていないはずだ。
先輩は頬から手を離すと、少し困ったような表情で溜め息を吐いた。
「それで?何をしてたの?」
「あ、えっと…写真を撮り忘れていたので…」
「星空の?それを撮りに来たの?」
「はい」
「そういうことか。じゃ、翼ちゃんが撮り終わるまで俺は一緒にいるねぇ」
先輩はそう言うと、その場に座った。