先輩から逃げる方法を探しています。
先輩の隣に大人しく座り、ゆっくりと頭を腕に乗せる。
「最初から素直にそうすればいいのに」
「嫌々仕方なくです」
横を向けばすぐ近くに先輩の顔があるだろう。
見なくてもどんな表情をしているのかは大体想像がつく。
先生を起こしてでもちゃんと許可を取ってから外出するんだった…。
後悔混じりに溜め息を吐く。
とりあえず早く写真を撮って戻ろう。
両手を空へと伸ばし、ピントを合わせ、シャッターを切った。
やっぱりカメラのレンズ越しよりも、肉眼で見たほうが綺麗に思える。
家の近くじゃこんな景色を見ることは出来ないだろう。
最初はそこまで興味はなかったけど、こうやって実際に見てみると来て良かったと思う。
…本当に綺麗。
「俺もそう思うよ」
「え?」
「今翼ちゃん、綺麗だなって思ったでしょ?違った?」
「はい。思いましたが…」
まただ。
どうして思ったことがバレているんだろう。
そういえば今やさっきだけじゃなく、先輩には私の思っていることを見透かされていることが多い気がする。
「先輩。私、表情が顔に出ていますか?」
「ん?急にどうしたの?」
「私の思っていることをよく当てられるので」
「ははっ、なるほど。翼ちゃんはいつも通りの可愛い無表情だよ。俺がどうして当てれるのかは内緒」
「…………」
「今は納得してないって感じだねぇ」
先輩の方へと目線だけを向けると、からかっているのか楽しそうに笑っている顔が見えた。