先輩から逃げる方法を探しています。
「っていうか、どうして翼ちゃんはそんなに感情を隠したがるの?」
「それは……先輩には関係ないことです」
最初は我慢して隠していたけど、今はもう人前では素直に感情を出すことが出来なくなった。
だから聞かれたところで私にももうわからない。
というか、どうして先輩はそんなこと知りたがるのかな…
「関係あるよ。だって…俺の好きな子のことだから知りたいじゃん?」
好きな子のことだから知りたい、か。
……好きな子のこと…だから……好きな子…
「は、はぁっ!?すっ、好きって…何を言ってるんですかっ…!?」
飛び起きようとした瞬間、腰に手を回され、少し起き上がっていた上半身はまた戻された。
先程よりも近く、ぴったりとすぐ背後に先輩がいる。
夏の暑さも相まってか、すぐに私の体温は上昇した。
「こういう時だけは無表情じゃなくなるよねぇ…翼ちゃんほんとずるい」
「意味がわからないですっ…離してくださいっ」
「理由を教えてくれたら離してあげる」
「だから先輩にはっ…」
「ま、別に教えてくれなくてもいいよ?ずっとこうしてられるしねぇ」
「っ……!!」
先程、捕えられていた時と同様にやはり先輩の力には敵わない。
「さぁ、どうする?」
選択肢のないものを選択肢があるかのように質問してくる。
本当、先輩はずる賢い。
「…わかりました。教えます」